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なぜ今DXが注目されているのか?
今、DXがブームです。近年、ビジネス関連の書籍や新聞の記事において、DXという言葉が登場しない日は無いのではないでしょうか?例えば、「eコマース企業が顧客の嗜好を予測した推薦アルゴリズムを適用、売り上げ15%アップを実現」や、「RPAツールを導入したことにより、経理会計業務の省人化、生産性向上」といった事例を多数耳にするようになりました。このように、DXが日本で注目されるきっかけとなった一因に、2018年に経済産業省が発表したDXレポートがあります。この資料は、現在の日本におけるITシステムの課題、DXを展開するために必要なことを分かりやすく紹介していますので、一読をおすすめします。
本レポートでは、DXの定義を「将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネス・モデルを創出・柔軟に改変する」としています。要は、IT技術やデジタル資産を活用して、ビジネスモデルを刷新し、利益を伸ばす仕組みを作っていきましょうということです。
本レポートは、さらにもう一歩踏み込んで、「2025年の崖」と呼ばれる問題を提起しています。現状のDX課題(複雑化したレガシーシステムを使い続けることや会社全体に蓄積されたデータの未活用)を放置したままでは、2025年以降、最大12兆円/年(現在の3倍)の経済損失が生じうるということです。特に、複雑化・ブラックボックス化した既存システムの運用、保守にIT予算のほとんどが割かれ、顧客や市場の変化にうまく対応できないことが指摘されています。このようなレガシーシステムを整理、刷新することにより、新たなデジタル技術を活用したビジネスモデルの創出を優先すべきだと説いています。
このようなレポートが出た背景としては、デジタルを活用したビジネスに投資をしなければ、既にデータを活用したビジネスで成功している米国や中国の大手IT企業に太刀打ちできないという心配があります。 これは、海外の企業が取り入れているから日本も真似しようという意味ではなく、市場競争社会においては、生産性が低い企業は生産性が高い企業に淘汰される運命にあるからです。さらに、日本は少子高齢化がいち早く進行し、働き手が今後減少していくことが分かっています。つまり、少なくとも現状維持の生産量を保とうとするには、生産性の向上は不可避です。働き手が減っていく中で、人がやっていることを自動化する、管理コストが高いアナログ管理をデジタル化して省人化するといった、DXにつながる施策が有効となります。
また、近年のデジタル技術進展は企業のみならず一般の人々に広く浸透しています。現在、日本国内の人口の9割以上がスマートフォンを持ち、常時インターネットにアクセスできる状態にあります。このような状況は少し前までは考えにくいものでした。例えば、SNSを活用したマーケティングやスマホによる決済や送金等といったサービスは、国民の多くがスマートフォンを持っていることなしには考えられません。つまり、人々の取り巻く状況の変化は新たなビジネス市場の創出を意味し、それに合わせて企業もデジタル投資をしなければ、例え今必要としなくても、乗り遅れてしまうということになります。
DXを実現する上での課題とは?
Web業界以外でITを本業としてこなかった業界では、副次的なシステム開発等は外部ベンダーに委託する分業体制の方が資本効率が良いため、本業に注力することがビジネス上の主流とみなされてきました。しかし、IT/データ活用と本業が不可分に結びつくことになった昨今のビジネス環境では、効率的なシステム設計やデータ活用そのものが競争優位性を与えるようになりました。そのため、これまでの業務体制を見直し、システム設計の再構築をする必要が生じます。しかし、ここにハードルがあります。
まず、これまで非効率ながらも上手くいっていた仕事のやり方を新たに見直すことは、多かれ少なかれ現場の社員からの反発が生じます。なぜなら、彼らはDX導入によってどの程度業務が改善するのかあまり実感が湧いていないからです。加えて、現場の方がシステムやITに詳しくない場合が大半で、いきなり現場のシステム設計について考えるよう要求しても混乱が生じます。かといって、新たに既存システムの改修を外部ベンダーに丸投げすることは、結局のところ、レガシーシステムの再生産になってしまいます。
こういうわけで、DXといっても何から始めていいか分からないという状態になりますが、この場合はスモールスタートから始めてみることをおすすめします。現在の業務フロー上でボトルネックとなっているところを洗い出して、そこを改善することを考えてみます。これはシステムの難しい話ではなく、業務フロー上で実際に作業している方の実感ベースで大丈夫です。例えば、ローカルPCにデータが溜まっていて、データの連携が面倒といった状況ならばクラウドのファイル共有サービスを導入する、データ集計や可視化のレポート作業がテンプレート化できるなら、RPA等の自動化を検討してみるといったことが可能です。もし、作業PCが重く業務効率が低下しているようなら、それをアップグレードすることも立派なDXにつながる施策になるかと思います。また、これを機にビジネスとシステムの関連性を整理し、競争力の源泉であるコアとなるビジネス以外は思い切って他社のクラウドサービスを活用するのも有効かと思います。

Insight Edgeの取り組みについて
もちろん、現場の担当者レベルだけでできることにも限界があります。その場合、DX実現のための専門家(エンジニア、データサイエンティスト、UI/UXデザイナー等)の協力が必要となります。Insight Edgeは、DX実現のための専門集団で、業務のデジタル化やAI導入等、現場では対応しきれないDX実現に向けて課題解決の打ち手やアイデアを「素早く形にする」機能を提供しています。
当社の親会社である住友商事は、金属事業から小売事業等、幅広い産業分野に跨って事業を展開しており、Insight Edgeでは、デジタル技術を活用してこれら既存のビジネスの新たな付加価値の提供に取り組んでいます。代表的な分析事例として、トレード、小売、各種サービスにおける市況や需要予測、与信判断、在庫の最適化等があります。
AI案件や新規事業開発においては、「素早く形にする」ことが重要になります。不確実性が高いためであり、緻密な計画や設計に時間を費やすよりも、最初は簡単な方法から始めて、試行錯誤を素早く繰り返しながら、最適解を見つけていくというアプローチが有効だと考えています。また、DXを成功に導くには、現場の方と密にやりとりをしながら、達成すべき目標について互いに合意が取れていることが必要になります。
DX案件の進め方については、以前私が具体的な案件事例を交えて発表した講演の記事がありますので、気になる方はこちらの記事を参照してみてください。
まとめ
本記事では、近年DXが注目されている背景、およびDXの実現において障壁となる要因は何なのかについて紹介しました。日頃の業務において、このようなことを意識する機会は少ないですが、このような背景を整理しておくことで、今やっていることの立ち位置をより俯瞰して見ることができるので、良い機会かと思います。
Insight Edgeでは、住友商事グループ事業領域を対象に、DXプロジェクトを実施しています。ご紹介した通り、事業領域毎にDXプロジェクトの特徴があり、異なる専門性が求められます。本記事を読んでいただき、より詳しい情報を聞きたい方、興味のある方は、是非HPからお問い合わせください!