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野村不動産×Insight Edgeが挑んだ、土地の魅力を最大化する「網羅的視点」をAIで再現 マルチAIエージェント
野村不動産様 事例インタビュー
分譲マンション「プラウド(PROUD)」や分譲戸建て「プラウドシーズン(PROUD SEASON)」などを展開し、高品質な住まいづくりで定評のある総合不動産デベロッパー、野村不動産。その販売戦略業務をさらに高度化するために、属人的になっていた一部の業務を支援するマルチAIエージェント「販売戦略エージェント」を新たに導入した。生成AIを用いたPoCは、野村不動産の住宅事業本部としても初の試みとなる。不確実性の高い生成AIを用いて、どのように業務の高度化を図ったのか。野村不動産住宅事業本部 営業企画部の平子氏、DX推進部の中塚氏、渡辺氏、Insight Edgeコンサルタント楠、PM松嵜、エンジニア東に話を聞いた。
※本記事は2026年2月に取材したものです。2026年4月の組織改正に伴い、取材当時の『住宅事業本部』は、現在は『レジデンシャル事業本部』および『アコモデーション事業本部』へ再編されています。インタビュー内容の整合性を考慮し、本文中の部署名は取材当時の名称を使用しています。
Project Member
野村不動産株式会社 住宅事業本部 営業企画部
平子 健
野村不動産株式会社 住宅事業本部 DX推進部
中塚 典孝
野村不動産株式会社 住宅事業本部 DX推進部
渡辺 鼓
株式会社Insight Edge コンサルタント
楠 秀大
株式会社Insight Edge プロジェクトマネージャー
松嵜 茜
株式会社Insight Edge エンジニア
東 直樹
戦略立案における生成AI活用 前例のないPoCを可能にした密な連携
本プロジェクトの旗振り役を担ったのは、グループの主力となる住宅開発・販売を行う野村不動産の住宅事業本部だ。「プラウド(PROUD)」に象徴される、立地・設計・品質にこだわった商品企画が、同社の特徴のひとつである。その企画力の源泉にあるのは、フロントに立っている個々の営業の力だと住宅事業本部営業企画部の平子氏は解説する。
野村不動産 平子氏
当社は営業の前線が非常に強い会社で、営業自身が街を歩きながら、自らその土地の魅力や、強みを見出していくスタイルです。各自が調査した結果をもとにSWOT分析などを行い、販売戦略を練り上げていくのですが、この戦略立案のところが、属人的になりがちでした。販売責任者全員が、一定以上のクオリティまでは仕上げられるものの、どうしても個々の主観や経験値に影響される部分もある。そこで網羅的に情報を吸い上げ、より戦略の精度を高めることで、その土地の魅力を余すことなく引き出すことと、各々がお客様に向き合うリソースを確保するために、AIを活用できないか、といったところから本プロジェクトはスタートしました
野村不動産の住宅事業本部内には、生成AIを用いたPoCの前例がなく、どのような施策が有効か、手探りからのスタートだった。
Insight Edge 楠
初めにお話を伺った時は、生成AIのユースケースとして、非常に試す価値のあるケースだと感じました。膨大なデータをもとに一定の観点で必要な情報を抽出するというのは、生成AIの得意分野。そこでどのようなデータが使われていて、現状SWOT分析をどのように行なっているか、初期のヒアリングでかなり細かくお聞きしました。この初期のヒアリングの際に、可能な範囲で実際のデータをご共有いただき、かなり濃密に実際の業務内容を教えていただけたことや、実際の業務を追体験させていただいたことで、エージェントにどういった振る舞いをさせるべきか、フローの土台を設計することができたと思います
野村不動産 中塚氏
その当時、かなり頻繁にお電話もいただいたように記憶しています。我々すらも気づかない細かいところまで、懸念点をすべて洗い出していただきました。他のベンダーからも話を聞いていましたが、事業会社を相手にAIを導入している実績が豊富で、どんなアウトプットだと本当に使いやすいか、親身になって相談にのってくれたのはInsight Edge。ここにお願いをしてよかったと感じましたね
Insight Edge 楠
私たちは住友商事グループの100%子会社として、グループ内のDX推進をこれまでミッションとして取り組んできました。当然ながら半端なことはできません。効果にコミットし、現場に入り込む。それができる体制・進め方が我々の特徴であり、今回ご評価いただいた部分ではないかと考えています
ベテランの「勘所」を、いかに言語化し、的確にエージェントに伝えるか
どのようなペルソナのターゲットに対して、どのような戦略で物件の魅力を提案するか。その戦略の骨子をつくるのが、「販売戦略エージェント」の主な役割だ。 かつて同社が販売してきた過去物件の振り返り資料などの社内ナレッジや、エリアごとのターゲット特性などのデータを参照するほか、外部のマクロ・ミクロ情報を掛け合わせた。さらには、これまで共通言語になっていなかったベテラン営業メンバーの勘所を理解して言語化し、エージェントに与えるコンテキストとして落とし込んでいく必要があった。
Insight Edge 東
ご要望をうまく言語化し、コンテキスト設計をしたり、必要に応じてフローを再設計するのが、技術的にもっとも難しい部分でした。普段言語化されていない、無意識化された知見をエージェントに与えていくためには、自分自身もお客様の業務内容を深く理解しないと設計できません。そのあたりの知識を深めることに、かなり時間を使ったように記憶しています
ここで活きたのは、野村不動産サイドの座組だった。営業の精鋭が集まる営業企画部と、DX推進部が連携していたことで、業務を極めた人間とDXの知見を持った人間とが、非常に近い距離にいた。
野村不動産 渡辺氏
当社の住宅営業マンといったらこの人、というような営業に精通したメンバーが営業企画部にいて、すぐに意見を仰ぐことができた。さらに、私も平子も営業経験があるため、現場の肌感はよくわかっている。業務経験者が開発メンバーに多かったという意味で恵まれた体制だったと思います
本プロジェクトでは、Phase1で、基本的な要望を満たすプロトタイプをつくったのちに、Phase2において、Phase1で浮かび上がった課題の解決をはかるべく、各所の精度改善・品質向上を行った。当時まだ技術的にも新しかったマルチAIエージェントの開発を進めるにあたって、Insight Edgeの豊富なPoC実績が存分に活かされた。
Insight Edge 松嵜
案件特性としてはチャレンジングだったと思います。ただ、私たちには、生成AI活用の実績がいくつもあり、不確実性の高い案件に対峙してきた経験がある。その経験を活かして、なるべく早く初版をつくってフィードバックを重ねて、ちいさく認識を揃えていくようにしました。野村不動産側には二週間ごとにフィードバックをいただいたのですが、こうした丁寧なプロセスを経て、最終的に満足いただけるものが出来上がっていったように思います
「自分ごと」として議論を尽くしたワンチームの共創体制
生成AIに、どこまで託すか。逆に人間はどこまでを担うか。プロジェクト終盤において争点となったのは、まさにその線引きだった。生成AIを活用した初の事例ということで社内からも期待が高まるなか、プロジェクトメンバーは社内調整に奔走した。
野村不動産 平子氏
生成AIに対する期待の高さから、どうしても夢が広がって、要望が増えていってしまう。我々は、二週間ごとにプロジェクトの経過を追っていて、Insight Edgeさんにはかなり小回りをきかせて対応していただいていたので、どこまでは修正できて、どこまではできないか。その理由はなぜか、社内に対して早め早めに説明ができ、期待値を調整することができました
生成AIは、プロンプトで100%制御することは難しい。ハルシネーションといったリスクもある。人間との違いをどのように受け止め、どのように折り合いをつけていくか。生成AI活用において重要になるのが、まさにこのポイントである。
Insight Edge 松嵜
ハルシネーションはどうしても起こりうる。その理解のもと、野村不動産様の方で、運用面でカバーしてくださったほか、我々の方でもアプリケーションの改善を重ね、運用とプロダクトの両面で対応していきました。懸念事項が出てきた場合も、一方的なフィードバックをいただくのではなく、実現可能な方法を探るために、双方が建設的な議論を繰り返すことができた。野村不動産のプロジェクトチーム皆様の熱量が高く、意見交換が非常に活発であったこと、エンジニアも会議に参加して意見を出し、皆自分ごととして取り組むことができたのが、成功要因ではないでしょうか
さらに、プロジェクトの初期段階からコンサルタント・PM・エンジニアが一体となって参画するInsight Edgeの開発スタイルも功を奏した。エンジニアが後方に回るのではなく、フロントに立ち、顧客の温度感や期待値を常にキャッチすることができたことが、プロジェクトを加速させた。
野村不動産 平子氏
我々の要望に対して表面的な課題解消ではなく、ゴールに向けた本質的な解決策を提案してくれた。さらに、その場その場で、エンジニアの方から、『こういうことですか?』と即座に直していただいたり、打ち合わせの翌日には依頼した内容が反映されていたりして。そのスピード感は、非常にありがたかったですね
実務利用者に本当に喜ばれる手応えをもとに、横展開へ
販売戦略エージェントは、2025年12月より業務利用を開始している。用地取得が完了し、商品企画を始める物件を対象に活用を開始し、今後は分譲マンションのみならず、賃貸や戸建といった他の商品にも広げていきたい考えだ。
野村不動産 平子氏
現場からの評判は上々です。特に出力内容に対して、ベテランの経験者からの評価が高い。実務利用者にストレートに刺さるものができたと思っています
特に評価が高かったのは、アウトプットのみならず、その結果に至るまでのプロセスを辿れる仕様に設計していた部分だった。
野村不動産 渡辺氏
なぜ、そのような生成をしたのか、ブラックボックス化しがちなAIの思考回路を出力し、担当者が読めるようにしたので、そのプロセスを読み解くことで、我々自身も気づきを得ることができまし、アウトプットをさらにブラッシュアップすることができます
さらに、当初の目的であった戦略立案の効率化、高度化だけでなく、思わぬ副産物もあった。これまでは、まず現場に足を運び、街を知るところが営業の第一歩だったが、AIエージェントを活用することで、各自があらかじめ街について調査をした上で現地に赴くようになった。
野村不動産 平子氏
以前よりも現地調査の解像度が上がっているように思います。こうした変化が、今後の営業成果につながっていくものと期待しています
今回が初の取り組みではあったが、野村不動産社内では、生成AIの活用事例が今後も増えていく見込みだ。
野村不動産 中塚氏
AIの導入については、具体的な要望が社内でもどんどん上がっている状況です。社内で解決できないこともあるかと思いますので、ぜひ機会があれば、今回のように事業会社視点で、伴走していただきたいと思っています
野村不動産 平子氏
今回のプロジェクトを通じていかに生成AIの活用が重要か、自分自身も非常に学びが多かったですね。Insight Edgeさんのように、我々の事業に踏み込んで、一緒になって考えてくれるパートナーは、非常に貴重な存在。デジタル領域における最新の技術で、当社のビジネスにおいて活用できるものがあれば、引き続き、情報を連携していただけると嬉しいです