Projects

 30年の知見を未来の羅針盤に──生成AIで投資判断を支援する「COMPASS」 

#Azure OpenAI, #RAG, #ナレッジマネジメント, #リスクマネジメント, #意思決定支援, #生成AI
業界:投資・総合商社・融資

総合商社が向き合う「暗黙知」という構造的課題

 総合商社における投融資判断は、複雑な要素が絡み合う高度な意思決定プロセスです。過去の成功・失敗事例から学び、リスクを見極め、最適な判断を下すためには、経験と膨大な情報の蓄積が不可欠となります。
 しかし、その知見の多くは一部社員に経験知として溜まるか、過去記録に保管されているに留まり、組織全体で共有・活用することが構造的に難しいという業界共通の課題が存在します。住友商事のリスクマネジメント組織においても、若手社員の案件審査に係る時間短縮や経験不足によるリスクの見落とし防止など、蓄積された経験や知識のさらなる活用が求められていました。
Insight Edgeは、この課題に対し住友商事と共創で取り組み、投資意思決定支援ツール「COMPASS」を開発しました。

AIで実現した「投資ライフサイクルの一気通貫」

 COMPASSは、過去約30年分・約1,500件に及ぶ投融資意思決定と、同じく約30年分に及ぶ投融資に限らない事業活動全般の損失事例、これらの社内データを基盤としています。Insight Edgeは、Azure OpenAI ServiceとRAG(検索拡張生成)技術を組み合わせることで、キーワード検索やAI検索(ベクトル検索)に加え、個別案件の要約、複数案件に共通する論点の抽出、チャット形式での深掘り分析、個別案件同士の掛合わせ分析を実現しました。
 最大の特徴は、投融資の「始まり(意思決定)」から「終わり(損失分析)」までを一貫した観点で可視化できる点にあります。経営陣には包括的な視点を、コーポレート部門には業務の高度化と効率化を提供するなど、Insight Edgeは異なるニーズを持つユーザーそれぞれに最適化された価値を設計しました。

汎用チャットボットを超えた投資判断知見プラットフォームの設計

 Insight Edgeが開発したCOMPASSが他のAI導入事例と一線を画すのは、その対象プロセスの「深さ」にあります。
 多くの事例が問い合わせ対応や稟議書ドラフト作成といった前工程の効率化に留まる中、本案件においても当初は類似したスコープ(稟議書ドラフト作成の支援ツール)で検討を始めましたが、Insight Edgeと住友商事で業務課題の整理を進める中で、関連するナレッジや知見を参照しやすくすることの重要性が明らかとなり、「似た案件ではどのような条件・リスク評価だったか」を横断的に提示する設計思想を採用しています。
 また、ユーザー範囲を特定の担当部門に限定せず、投資判断に関わる多様なレイヤーの関係者が参照可能である点も、本案件における設計上の特徴のひとつです。業務効率の向上だけでなく、過去の類似案件を参照しリスク要素整理のスタートとするといった観点での活用を想定しています。

共創で目指す「知の探索の民主化」

 Insight Edgeは、住友商事との継続的な共創を通じて、COMPASSのさらなる価値向上に取り組んでいます。Azure OpenAIやRAG構成といった技術基盤は他社事例にも見られますが、総合商社の投資意思決定プロセスにおける議論という高度なドメイン知識と一体で設計されている点が、Insight Edgeならではの強みです。
 一部社員の暗黙知であった案件の相関関係をデジタル上で可視化し、経験の浅い社員でも過去30年の教訓を容易に学習できる環境を構築しました。Insight Edgeは今後も、組織における「知の探索の民主化」の実現に向けて、お客様とともにサービスを拡張していきます。