サミット: AI値引きシステム
現場の「経験と勘」をテクノロジーで進化させる
スーパーマーケットにおいて、閉店前の値引き判断は店舗の利益に直結する重要な業務です。どのタイミングで、どの商品を、いくら値引きするか。この判断一つで売上と値下・廃棄ロスのバランスが大きく変わります。しかしその意思決定は、ベテラン社員の長年の経験に依存する部分が大きく、担当者によってばらつきが生じやすいという構造的な課題がありました。
Insight Edgeは、サミット株式会社様のこの課題に対し、AIアルゴリズムによる値引額の最適化と、現場スタッフが直感的に操作できるモバイルアプリ・ラベルプリンタ連携システムを開発。2022年から約1年8か月に及ぶ実証実験を経て、全店舗への展開を実現しました。
店舗研修から始まる、現場密着型の開発アプローチ
本プロジェクトにおいてInsight Edgeが最も重視したのは、現場の実態を深く理解することでした。プロジェクトメンバー自らが店舗研修に参加し、品出しや発注といった実務を体験。その中で、忙しい時間帯にスマートフォンを操作する難しさや、作業導線における細かな非効率など、データだけでは見えてこないリアルな課題を把握しました。
こうした現場への没入を通じて、ベテラン社員による経験に基づく値引き判断は大きく間違えることがない一方、作業中心の組み立てになりやすく、必ずしも理論的に最適な値引額ではないことに気がつきました。そこに値下・廃棄ロスを削減するチャンスがあると考え、データサイエンスを用いた値引額最適化の仕組みを開発し、使いやすいUIへと落とし込んでいきました。
サミット様のリテイルDX推進室や店舗社員の皆様と同じ目線に立ち、共に課題を解決していく姿勢が、本プロジェクトの土台となっています。試作段階のアプリを複数店舗で実際に利用していただき、店舗社員の皆様のリアルなフィードバックをアプリに反映させるアジャイル開発を複数回行うことでアプリのUIUXを洗練させ、実業務において無理なく運用できる仕組みを実現しました。
データサイエンスで「最適解」を導き出す
データ分析観点においては、客数予測、価格弾力性推定、値引最適化という3つのアルゴリズムを構築しました。過去の販売データに基づく机上シミュレーションにより、導入前の段階でロス削減効果を検証できる仕組みを整え、プロジェクトの方向性に確かな裏付けを与えました。AI値引きの対象である当日完売の即食商品は、天候や時間帯によって需要が大きく変動するため、値引きの難易度が高いうえに、判断スピードも求められる領域です。
Insight Edgeはこの難題に対し、データサイエンスの知見を駆使して取り組み、属人的な判断に頼っていた領域に、より最適な値引額の判断と再現性のある仕組みをもたらしました。アルゴリズム開発時には、単に最適解を出すだけでなく現場が違和感なく使えるように注意しました。その結果として、現場の店舗社員が信頼できる仕組みになり、アプリにより「商品をスキャンする、指示を確認する、シールを貼る」という一連の作業を誰でも実施できるようになりました。このように、アルゴリズムの最適化だけでなく現場オペレーション全体からのフィードバックにより改善を積み重ねた設計が、本プロジェクトの大きな特徴です。
PoCを超え、全店展開を完遂する実行力
約3か月の準備期間でMVP(最小機能製品)を構築した後、5段階にわたる実証実験を実施。対象コーナーや店舗数を段階的に拡大しながら、UIや機能の改善を重ねました。
iPhoneとプリンタの連携における技術的課題や、現場からのフィードバックに基づく改善要求にも迅速に対応しました。限られた期間で最大の検証成果を得るために、時には前日夜の値引き業務時の試用後に得られたフィードバックを翌日午前に受け取り、その日のうちに改善案をサミット様のリテイルDX推進室と協議・合意し、夜の値引き業務開始までに反映させることもありました。これらのスピード感のある取り組みにより、数千人規模の社員が日常的に使用できる水準までシステムを磨き上げています。
アルゴリズムやUI/UXといったコア領域はInsight Edgeが担当しつつ、アプリ開発やハードウェア連携については外部パートナーと連携するマルチベンダー体制を構築。複雑なステークホルダーをまとめ上げながら、プロジェクト全体を一貫してリードしました。
約1年8か月という長期の実証期間を通じて、実運用に耐えうる品質まで丁寧に作り込み、全店導入という成果へと結実させています。現場に根ざした共創の姿勢と、最後までやり切る実行力。この両輪こそが、Insight Edgeの提供価値です。